地域とともに

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2022年2月1日

「未来に向けて」
JRE×大原姉弟クロストーク 第二回

JRE×大原姉弟クロストーク 第二回JRE×大原姉弟クロストーク 第二回

サーファー&ボディボーダーとして世界を舞台に活躍する大原洋人選手と大原沙莉選手が、JREの常務執行役員を務める土居聖と行った対談の第二弾。
自分たちの活動の場である海を中心にして環境問題を考える大原姉弟と、企業として再生可能エネルギーの普及に努めるJREが、お互いの取り組みなどを語り合いました。

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再生可能エネルギーが示す未来への道

土居:

お二人は、再生可能エネルギーというと、どんなことが頭に浮かびますか?

沙莉:

水力とか風力とか…。小学校や中学校でかじった程度の知識しかないんですが…。

土居:

日本人は古くから、時代劇に出てくるような水車を使っていました。もちろんその頃は電気がなかったわけですが。水車によって作られたエネルギーで臼を挽くなどしていました。それに、自然由来のものを燃やす、例えば薪を燃やすということも、一種の再生可能エネルギーです。これはバイオマスと呼ばれています。木が育つ間に二酸化炭素を回収するので、エネルギーがきちんと循環しているというシステムですね。今で言うと、太陽光パネルは一般家庭にも普及していますし、風力発電は千葉にもありますよね。今後は海の中に作る洋上風力も出来てきます。それ以外にも、ダムで作る水力発電もあります。大きなものだと黒部ダムが有名ですね。また地熱発電というのもあって、わかりやすく言うと温泉ですね。地下に熱い水が溜まっているので、そこを目掛けて穴を掘っていき、温水を出して電気を作っていく方法です。
世界を見てみると、太陽熱発電というものもあります。これは太陽光発電とは違い、無数の鏡を一ヶ所に反射させ、そこで熱くして蒸気を発生させ、電気に変える方式です。日本ではそれほど大きな土地がないので一般的ではなく、逆に一番ポピュラーなのが太陽光発電です。

沙莉:

再生可能エネルギーは、現在どれくらい家庭に普及しているのでしょうか?

土居:

現在の再生可能エネルギーの占める割合は、全体の発電量に対して18%です。そのうちの8%が昔からある大型ダムによる水力発電。この割合はこれ以上増えません。大きなダムはこれ以上作る場所がないからです。日本政府は再生可能エネルギーの割合を2030年までに36~38%に増やすという目標を設定しています。

洋人:

それは家庭で再生可能エネルギーを作っていこうということなのでしょうか? それとも国や自治体が再生可能エネルギーの発電施設をもっと作って普及させていくということでしょうか?

土居:

基本的には両方です。今、新しく家を建てる家庭は、ほとんどの場合、太陽光パネルをつけますよね。ただ、古い家はなかなか取り付けられないので、どちらかというと自治体や私たちのような会社が大きな設備を作る方向で再生可能エネルギーの割合が増えていっています。

洋人:

再生可能エネルギーを利用すると、今のところ電気代がどれくらい割高なのでしょうか?

土居:

電気料金の明細を見ると、再生可能エネルギー付加金というのが別項目で記載されていて、それが一般的な家庭だと平均で800円。だいたい10%のコスト増になっています。これは、最初の大量導入の際に高いコストの設備が追加されたことが原因で、今はどんどんコストが下がってきています。将来的には電気代が現在の電気代と同じか、それより安くなるようにすることが目標です。どんどん普及していけば、新しい技術も生まれてきます。それを作る会社の間で競争も激しくなるので、どんどん安くなっていきます。例えば、昔は高価だった液晶テレビが今では安くなったように、いっぱい作ることによって安くなっていく。それと同じです。
今、私たちが手がけている洋上風力発電についても、海は国の持ち物なので、国がこの海域で発電所を作ってください、その場合いくらで作れますか? という形で入札を行います。私たちの競合企業も入札しますので、なんとか競合企業より安く提案して、建設の権利を獲得しようとがんばるわけです。こうやってどんどん安くなっていくという仕組みですね。
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沙莉:

実際、再生可能エネルギーの利用によって、環境にはどれくらいの影響があるのでしょうか?

土居:

このまま再生可能エネルギーが増えずにCO2を出し続けると、これからの数十年で地球の平均気温は4℃上がると言われています。その場合の影響は単純に暑くなるだけではなく、数えきれないぐらいあるのですが、そのひとつが海面の上昇。4℃の気温上昇だと110cm上がると試算されています。海面が30cm上昇すると、日本の砂浜が半分以上なくなります。1m 上昇すると90%以上なくなり、同時に海岸線だけではなく、例えば東京のお台場などの臨海部分は大きな浸水を受けてしまいます。
最近、何十年に一度の大雨や大型台風など発生確率が高くなってきていますが、気温が上昇するとこういった事例がますます増えていきますので、日常生活も大きく変わってしまうと同時に、危険にさらされます。気温が3℃上がると、夏場は毎日台風が発生するなんていうことにもなりかねません。
世界的にはこれから1.5℃以内の気温上昇に抑えないといけないと言われています。もちろんみんな車に乗るのをやめて、電気を使わないようになれば気温は上がらないですが、やっぱり日常生活を行うにはそういうわけにもいかない。車や電気の使用だけでなく、実は牛の存在も環境に影響を及ぼしていて、草をいっぱい食べますし、ゲップやおならとしてメタンガスを多く放出します。なんといっても胃袋が4つもありますからね(笑)。アメリカ人が全員通常のハンバーガーを食べるのをやめて、ソイミートのハンバーガーに変えたら、地球温暖化が止まるとも冗談で言われているくらいです。
地球温暖化の原因はいろいろありますが、2012年に比べて、電気にかかるCO2排出量は大体22%減っているというデータがあります。2050年までに、森林などのCO2吸収分と合わせて電気によるCO2排出量を実質ゼロまで持っていかないと、私たちが知る日常生活は完全になくなります。

洋人:

アメリカやヨーロッパなど、環境問題に対して積極的な国と比べて、日本の再生可能エネルギーの普及率はどれくらいなのでしょうか?

土居:

再生可能エネルギーの普及については、ヨーロッパがかなり進んでいます。2030年の日本の目標である普及率36~38%に比べると、スペインは74%、ドイツは65%を目指していて、積み上げるとEU全体では57%となるので、日本とは大きな差がありますね。ノルウェーは水力発電が盛んで、再生可能エネルギー比率も高いのですが、電気自動車もすごく普及しています。特筆すべきは、ノルウェーが石油の産出国でもあるという点。だから本来なら石油の値段が安いはずですが、ガソリンの消費を減らすために、実はヨーロッパの中でも高いガソリン価格になるように税金をかけています。それもあってみんな電気自動車を買っているんですよね。実際、ノルウェーでは新しく購入される車の6割以上が電気自動車です。CO2削減のために国として後押ししているのです。
アメリカは再生可能エネルギーに対する考え方が地域、州によって違います。ただ、海岸線に近い州は積極的に再生可能エネルギーを導入しています。2030年の目標でいえば、カリフォルニア州は今でもすでに53%の普及率ですが、60%を目指していますし、ニューヨーク州は70%を目指しています。
日本は省エネに対する対策は優れていますが、それ以外の面ではまだまだ遅れていますし、石炭火力に対するスタンスでも世界から非難されているというのが実情ですね。
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JREの仕事と信念

沙莉:

JREとしては環境に対してどのような取り組みをしているのでしょうか?

土居:

私たちの普段の仕事、つまり再生可能エネルギーの発電所を作るというところが環境への取り組みと言えますが、それだけではなくて脱炭素社会に繋がるさまざまな取り組みを増やしていかないといけないと思っています。私たちが作る洋上風力発電は海を使う仕事になりますので、海が豊かになって全員がハッピーになる取り組みをしたいですね。例えば、最近では磯焼けと言って、海の中の海藻が減ってきているという問題があります。昔は海水の汚染が主な磯焼けの原因でしたが、今は海水汚染が改善してきていて、それ以上に地球温暖化の影響が大きくなっています。海水温が上がると、ウニが増えすぎて、そのウニが海藻を食べて、海の砂漠と呼ばれるような環境になってしまいます。少しでも海藻が生えたら、ウニが寄ってきて食べて尽くしてしまうんですね。しかもそのウニがガリガリにやせ細っているんです。中身がないから、人間も獲らないし、結果としてウニが減らない。しかも、海水温が上がることによって、それまでとは違う種類の魚がやってきますし、その中には海藻を食べる害魚もいます。そうした原因によって海藻が減っていっているわけですが、海藻は海水をキレイにし、植物としてCO2を吸収して地球温暖化を抑制する効果がありますから、私たちはその海藻を再生する取り組みをしていきたいと思っています。
千葉でもそういう取り組みをしている人はいますよ。海の中に海藻を植えていくことは不可能なので、胞子や種を蒔いたり、魚に食べられないようにネットを張ったりといったことをしています。ウニを獲って、陸上でキャベツなどを食べさせると、ウニの身が美味しくなると言われていて、そういうことをしている人もいますね。

洋人:

JREが目指す理想の社会とはどんなものでしょうか?

土居:

コロナ禍で外出が制限され、毎日当たり前にできていたことができなくなって、最近、普通の生活のありがたみを感じています。地球温暖化と環境問題を解決することは、将来に亘ってそんな今まで通りの、当たり前の生活ができる社会が続くことにつながります。私たちの会社が目指すビジョンは、将来の世代が幸せに生活できる社会です。これはなにも格好良くキラキラしたものではなく、全員が朝起きたらその日の生活が普通にできる社会、お二人で言えばこれまで通りサーフィンができる砂浜がある、そういう社会のことです。

洋人:

海面が上がってビーチがなくなったら、サーフィンはもちろんできなくなってしまいますからね。

沙莉:

土居さんもせっかくサーフィンを始められたのに、できなくなってしまったら悲しいですね(笑)。
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世界での活躍することの影響力

土居:

お二人は今後、どのような形で環境問題に関わっていきたいと考えているのでしょうか?

洋人:

今関わっていきたいと思っているのは、ゴミをなくしていく活動です。僕たちの場合は海が仕事場なので、そこをキレイにするということには関わっていきたい。でも今日のお話から、一人一人の意識を変えることで環境問題に対してプラスになることがあるということがわかったので、そういうことをどんどんやっていきたいなと思っています。

沙莉:

私たちが社会貢献活動したいと考えている理由は、サーフィンとボディボードの活動の場を守っていかなきゃいけないからということなんですが、もう一つは、サーフィンを始める人が増えたからこそ、そういう人たちの意識を変えていきたいなと思ったからなんです。昔はポイ捨てをすると、先輩からすごく怒られるということがありました。でも、最近はそんなことがなくなってきているので、それを伝えられる立場にいる私たちがすべてのサーファーに海岸を守るという意識を植え付けていきたいなと思っています。
ただ、今日いろんなお話を聞いて、私たちが実際に行動していくことが大事だなと感じました。

土居:

お二人とも大きな影響力を持っているので、SNSなどでこうした問題をどんどん拡散してもらいたいなと思いますね。
最後に、お二人の競技での活動や目標を教えてください。

沙莉:

2019年にボディボードの世界チャンピオンになったのですが、もう一度世界チャンピオンになるというのが当面の目標です。本当は2020年も世界チャンピオンを目指そうと思っていたのですが、その矢先にコロナによって活動ができなくなってしまったので、ツアーが復活する今年は改めてがんばっていきたいです。
あと、サーフィンは認知度が高くなってきていますが、私がやっているボディボードはまだまだ認知度が低いので、少しでもみんなに知ってもらえるような活動もしていきたいと思っています。

洋人:

去年、東京2020オリンピックに出場しましたが、メダルを獲れなかったので、次のパリオリンピックでは出場してメダルを獲得するというのが目標です。一年一年を大切にして、課題をクリアしていけば、叶えられる目標かなと思っています。
あとは、サーフィンがオリンピック競技になって認知度は上がったと思うので、それを生かして環境問題にもっと関わっていきたいですね。まずはサーファー代表として、アスリート代表として、SNSなどを通じてそういう問題を一人でも多くの人に伝えていくのが大切なのかなって思います。

土居:

お二人で世界チャンピオンになれるように応援しています!

洋人:

今日はいろいろと勉強させていただきました。ありがとうございました!

沙莉:

今日のお話でかなり知識が増えたので、私たち自身がお手本となれるように行動していきたいと思います。ありがとうございました!

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